♬ ~初めての言葉~ ♬   テープ起こしで出会う言葉たち

テープ起こしの仕事をしていると、さまざまな言葉に出会います。知らない言葉、聞き取れない言葉、聞き間違った言葉。印象に残る言葉を折々集めてみたブログです。

【つるす】

このシリーズで「動詞」は珍しいです。今回ご紹介する「つるす」は、国会用語です。

国会とは、言うまでもなく国の立法機関(審議・議決を経て法律を制定する議会)のこと。非常にざっくり言うと、国会でなされているほとんどのことが、ひたすら法律の制定である、とも言えます。議会制民主主義の日本では、法案は国会で可決されることが必要です。当然のことながら、誰が提出した法案かによって、賛成者(政党単位で行動するのが普通です)が多かったり反対者が多かったりします。通常、与党と野党は対立していることが前提です。そして、政府・与党が提出する法律がかなりの数を占めています(閣法)。閣法以外には議員立法があります。

さて、法案が提出されると、その審議をどのような手順で行なうかということを議院運営委員会で審議し、決めることになります。簡単な手続きで審議が始まり、さっと採決まで行ってしまう法案もありますが、本会議で「趣旨説明」と質疑を行なってから委員会に付託する案件というのもあります。この「本会議での趣旨説明するように求めること」を「つるす」とか「つるしをかける」と言います。

与党に対立する野党の基本的なスタンスとして、「国会審議を遅らせること」が野党国会対策委員会の重要な仕事の一つとされます。「つるしをかける」ことによって、重要な法案の審議を遅らせ、時間切れをちらつかせるというのが、一つの戦術なのです。時間切れを避けたい与党に対して、野党側が得たいと願っている何らかの目標の成就をバーターに「つるしを解く」「つるしを下ろす」、というやり方です。「つるしが解かれ」た法案は、「趣旨説明」が省略されて委員会に付託され、審議が進みます。

国会のインターネット中継では、非公開が原則の委員会を除き、すべての会議の生中継が行なわれているそうです。必ずしもリアルタイムで見る必要はなく、オンデマンドで録画を見ることもできるとか。

通常国会に提出された法案はすべて、与野党の力関係がせめぎ合うなかランク付けされます。法案のランク(求められる審議過程)の内容については別途書きます。