【担務(たんむ)】
意味は読んで字の如し、「組織において担当する職務の範囲、任務」といったことですね。
この単語を「初めての言葉」として掲げるのは何故かといいますと、テープ起こしをするうえで大変聞き取りづらい単語だからです。
「ターム」「タブー」「たむ」「たんぶ」
こんな感じに聞こえます。
「た・ん・む」とはっきり発音する人はほとんどいません。嘘だと思ったら、次の文章をふつーーに音読してみてください。政務三役になったある政治家の話をもとに、私が作文してみたものです。
「そうですねー、その当時、その組織編成の話に私はほとんどタッチせず、完全にAさんに任せていました。というのは、全体に担務が非常に多かったので、組織内では縦(ライン)でやるというよりはむしろ、横の分担をやっていた。ですから逆に、私がやっている話については実はほとんどAさんにはご相談をしませんでした。」
活字を読む限り、ごくごく普通の文章ですよね。どこか難しいところがありますか? という感じですし、たとえ「担務」という単語を初めて目にしたとしても、文脈から意味は類推できると思います。が、これを耳で聞くと、「たむが非常に多かった」とか「タブーが非常に多かった」とか、いろいろに聞こえてくるのです。ましてや、イントネーションが微妙に違っていて、「た」にアクセントが明瞭にない場合、あるいは、別の言葉を言いかけてから言い換えたりした場合など、自信をもって「担務」と充てるのはなかなか難しい。
こうしたコンテクストで、特に国政レベルでは「明確に定められた職務範囲」という意味で「担務」という言葉が普通に使われる、という予備知識がない場合、音の性質上、一生懸命聞けば聞くほどいろいろな音に聞こえてきて捉えにくい単語の一つかなと思います。