♬ ~初めての言葉~ ♬   テープ起こしで出会う言葉たち

テープ起こしの仕事をしていると、さまざまな言葉に出会います。知らない言葉、聞き取れない言葉、聞き間違った言葉。印象に残る言葉を折々集めてみたブログです。

【一丁目一番地】

「最も重視すべき事柄」の意味で形容詞的に使われます。

仕事のなかで圧倒的に多く聞くフレーズが「一丁目一番地の政策」です。優先順位が最も高く、とにかく最優先で実現すべき政策、というニュアンスですね。

政治、行政の分野では普通に使われる表現ですが、ちょっと可愛い感じがしてキライじゃありません。直接的ではなく、どこかレトリックを感じさせる、つまり、大人の表現といった感じがしませんか。

「消費税問題は、戦略的に何が何でも実現すべき政策だから」なんていうとものものしいけど、「消費税問題は一丁目一番地の政策だから」と言ったほうが語感もやさしいし、余裕が感じられますよね。

しかし、ちょっと人ごとふう、当事者の物言いではないように聞こえるでしょうか。その印象は正しいと思います。例えば対抗政党の話として使ってみると、普通の表現と感じられていたこの言葉、いきなり棘のある印象になります。

「○○党は選挙戦の最中は、△△△の政策について盛んに“一丁目一番地”と言い立てていたくせに、選挙が終わったらまったくおくびにも出さない」みたいな文脈で使われます。

つまり、「これこそがいちばん大事なんだと(必要以上に)言い立てる」といったニュアンスが含まれるわけです。ですから、「大騒ぎしている」という雰囲気を出したいときに使う形容詞だ、という解釈をしても、あながち見当外れではなさそうです。

 政治・行政以外で使われているのを見聞きされた方がいらしたら、ぜひお知らせください。

 

 

 

 

【振り付ける】

これも霞が関用語です。

もちろん、演劇やバレエなどの「振付」と意味は同じ。では、誰が振付師で誰が演じ手・踊り手かといえば、振付師=官僚、演じ手・踊り手=政治家ということになります。

国会議員(特に閣僚)が審議会や国会で読み上げる文章を作文するのは官僚であることは知られていますが、文章の原稿を用意するだけでなく、「ここではこういうことを言ってください」と事細かにレクチャーをして、振る舞いから発言から何から何まで指示をすることを「振り付ける」と言います。

自民党政権時代は、そこにあうんの呼吸があり、官僚の振付どおりにうまく動くかわりに、「ここは絶対にのんでくれ」と自分の選挙区に有利に物事を運ばせたり、自分の所属あるいは代表する利益団体の言い分を通したり、ということをバーターにしていた政治家も多かったと言われます。

官僚側から見れば、どんなに怒鳴りつけたり威張ったりしても、最終的に官僚の振付通りに動いてくれるのは「いい大臣」。人当たりが良くても、性格が良くても、振付を無視して勝手に発言したり行動したりする大臣は「困った大臣」なのであります。

それにしても「振り付ける」というこの用語が使われること自体に、行政は内閣ではなく官僚が実権を握っているのだ、という雰囲気があらわれていますね。言葉一つにその実態がにじみ出ている、よい例かと思います。

ユーモアのセンスが感じられないので、好きではない霞が関用語です。

【原課・原局(げんか・げんきょく)】

 

 まさに霞が関用語です。

  「【げんか】の課長は、そのような会議には陪席しているものなのでしょうか」

といった感じでさらりと話されたら、霞が関用語という印象はまったく抱かないかもしれません。

「げんか」の「か」が「課」であることはおそらくわかるでしょう。あるいは、「げんきょく」と言われた場合でも、文脈から「きょく」が「局」であることはたぶん迷わないでしょう。

さて、「げん」をどうしましょう。「現」「原」「元」あたりで迷うことになるのではないでしょうか。英語もそうですが、簡単な言葉ほど使用法も聞き取りも難しいのです。「どうだ~」と言わんばかりにゴツゴツと自己主張するようなジャーゴンなら、「ジャーゴンだな」ということがまずわかりますから、気づかずに素通りしてミスすることも、意味をくみ取り切れないこともないでしょう。

「げんか」のようなさりげないけれど、固有の意味を持つ言葉こそ要注意です。

ちなみにイントネーションは……

同じ「げんか」でも、「現下」「原価」は、「げ」にアクセントがあり、音階に直すと 「ミドド」という感じと言ったらいいでしょうか。それに対して「原課」の場合は、アクセントはなく、だらだらとした感じで、音階でいうと「ドレレ」です。

さて、ウェブで意味を調べてみます。「原課」とは……

  「特定の案件を担当している課のこと」

とありました。

http://www.weblio.jp/content/%E5%8E%9F%E8%AA%B2

それじゃ特定の案件を担当しない部署ってどこ? ということがわからないと、この説明ではなかなか納得しにくいですね。

そこで、今度はもう少し組織全体に目を向けてみます。「官房」をwikiで見てみると、ここにわかりやすい説明がありました。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%98%E6%88%BF

ここを読むと、官僚組織(行政組織)は、所掌内容の異なる「官房」と「原課」から成っていることがわかります。「官房」が司るのは、行政組織の内部管理と行政事務の総合調整。中でも重要なのが人事、文書、会計の3つです。一方、「原課」がいわゆる一般の行政事務(内部向けではないもの)を司ります。

官房的な業務を担当していても、名称が「官房」ではない場合もありますが、意味合いとしては、行政機構の内部は、「官房」か「原課」に大別されるわけですね。

行政関係の仕事をする場合、必須単語です。

 

 

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