♬ ~初めての言葉~ ♬   テープ起こしで出会う言葉たち

テープ起こしの仕事をしていると、さまざまな言葉に出会います。知らない言葉、聞き取れない言葉、聞き間違った言葉。印象に残る言葉を折々集めてみたブログです。

【振り付ける】

これも霞が関用語です。

もちろん、演劇やバレエなどの「振付」と意味は同じ。では、誰が振付師で誰が演じ手・踊り手かといえば、振付師=官僚、演じ手・踊り手=政治家ということになります。

国会議員(特に閣僚)が審議会や国会で読み上げる文章を作文するのは官僚であることは知られていますが、文章の原稿を用意するだけでなく、「ここではこういうことを言ってください」と事細かにレクチャーをして、振る舞いから発言から何から何まで指示をすることを「振り付ける」と言います。

自民党政権時代は、そこにあうんの呼吸があり、官僚の振付どおりにうまく動くかわりに、「ここは絶対にのんでくれ」と自分の選挙区に有利に物事を運ばせたり、自分の所属あるいは代表する利益団体の言い分を通したり、ということをバーターにしていた政治家も多かったと言われます。

官僚側から見れば、どんなに怒鳴りつけたり威張ったりしても、最終的に官僚の振付通りに動いてくれるのは「いい大臣」。人当たりが良くても、性格が良くても、振付を無視して勝手に発言したり行動したりする大臣は「困った大臣」なのであります。

それにしても「振り付ける」というこの用語が使われること自体に、行政は内閣ではなく官僚が実権を握っているのだ、という雰囲気があらわれていますね。言葉一つにその実態がにじみ出ている、よい例かと思います。

ユーモアのセンスが感じられないので、好きではない霞が関用語です。